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【SEIZO対談】JIZAIE X SOLIZE PARTNERS X K’s DESIGN LAB 後編

  • 1 日前
  • 読了時間: 16分

テーマ9:CEATEC2025でのデザインについて1


三浦

CEATECで展示したものに色で分かれてるパーツのデザインがあるんですが、「色塗っちゃえば印象ぜんぜん違うよね」みたいなところがあります。

このバンドで固定するスタイルのプロダクトなんかも「3Dプリンターは靱性・弾性のあるものじゃない」というイメージがある中で、ビョンって曲がってたりすると「え?これ何でできてるんですか?」って、急に分からなくなる。

金属部材が隣にあると「3Dプリンター部品」という印象が薄くなるので、積層感とかサーフェスの粗さも、あまり気にならなかったり。そういう見え方のコントロールはいろいろありますよね。


加藤

確かに。今って「高くていいもの」は作れるんですよね。でも、やっぱり安くても嬉しいっていう世界を作らないといけない。「次世代の製造」をやるって言っているなら、高級品だけ売ってても文化にはならないじゃないですか。安くて、たくさんの人に消費してもらう世界をつくりたいですね。


内田

そうそう。ドライブしていくには、絶対N数が必要。


加藤

やっぱり量。量がないと、ビジネスとして成り立たない。それを作るのが、SOLIZE PARTNERSさんの役目かなと( 笑)。


井田

いや、本当そうで。3Dプリンターだと「ここをこう変えるだけで、造形量が全然変わります」という考え方になるので、形状を工夫するだけでコスト1/5、とかも方法としては全然あり得えます。そういうところでコストを下げていくべきなのかなとは思いますね。



加藤

やっぱさ、サイゼリヤだよね。目指すべきはそこかなと(笑)。


三浦

僕たちも 「ミラノ風ドリア」のような定番手法を作っていきたい(笑)。でも本当に、もともと話したときからそうなんですけど、得意なところは得意な部品に任せるっていう考え方は、ある程度強みだと思っています。平板まで 3Dプリントするのはさすがに無駄みたいなところはあると思うし、このジョイント部分なんかは、やっぱり金属のほうがいいよね、とか。


加藤

そうなんですよね。当たり前の話なんだけど、今回のプロジェクトでやったように、平板の部分は金属で出そうよ、とか。「得意な部分だけプリンターで出していこう」という使い方って、作り手側から「こういう風に使ってください」じゃなくて、実際のユーザーが自然にそういう使い方をしているっていうほうが説得力があるんですよね。すごく当たり前の考え方です。我々はメーカーさんからいただく命題として、デジタルとか3Dプリンターだけで完結させることが多かったから、今回の取り組みは、すごく面白かったなと思っています。




鈴木


「アルミプレート+バンパーモデル」

この金属の平板をバンパーで挟み込んだモデルは、一番安価に作れる製品なんですけど、アルミのヘアラインの表情みたいなものって、僕らの潜在意識の中ではすごく見慣れている。だから、そこでの安心感っていうのはスッと入ってくるところがあると思うんですよね。一番目立つ部分がそういう素材になっているのは、プロダクトとしては良い方向性かなと。あとは必要なパーツを3Dプリンターで出す、という方向性なので、製品としての完成度も高いと思います。


加藤

これは、材料費としては本当にめちゃくちゃ安い。ただのバー材と箱なんで、すごく安いですね。一方で、苦労したのはビスの穴をどう受けるか、とか。3Dプリンター的に言うと、素材がちょっと柔らかかったりもするので、もちろん射出やプラスチックでも同じ悩みはあるんですけど、「どれくらいのクリアランスを見ればいいか」とか、そういうややこしいところは苦労しましたね。本当は、そういう部分はノウハウとしてきちんと持っておきたい。「ビス穴開けるなら、この寸法」とかが蓄積されていけば、設計として困らなくなるはずだなと思いながらやっていました。


遠藤

このモデルは四隅にビスがあって。本当にプロダクトとしても、最小限の労力、デザインと設計と3Dプリントのアウトプットだけで目指した形です。以前は、3Dプリンターでやるときって「同素材だけで完結させる」みたいな条件が多くて、別素材を組み合わせると、どうしてもアセンブリしづらいところがあったんですけど、今回はそういう部分も結構できるようになってきました。そこが大きいですね。


三浦

ビスもそうですし、ヒートインサートで金属を入れる、みたいなことも “製造ベース” では全然アリだと思っています。はめ殺しになるとかはあるものの、樹脂製品の“はめ殺し”って世の中にけっこうありますしね。ツメを割らないと外れない、とか。


鈴木

例えばこのバンパーの長い部分って、割と反りやすい、みたいな話あるじゃないですか。そこは構造もそれに合わせて、工夫したりしているんですか?


遠藤

反る反らないもありますが、平板をそのまま出すのは美観的にリスクが高いので、リブを入れている、という感じですね。これは機能製品を目指していてバンパー形状にしているのが、デザイン的なポイントになります。


加藤

デザイン的な要素が大きいかもですね。構造的な制約や造形上の制約というより、「デザイン的に丈夫そう」「堅牢そうに見える」みたいな印象を重視しているところがあると思います。


三浦

長さも、言うてそんなに長い寸法じゃないので、まだヒケとかも気にならないですけど、これが 30cm、40cmとかになってくると、また話は変わってくるかもしれないですね。




加藤

こちらのバンドでの固定形式のプロダクトは結構画期的というか、普通に面白いなと思っています。


遠藤

弊社オリジナルデザインとして、出すものがあまりにも形状に依存していたり、ターゲットを想定できていなそうなものにするのには抵抗があり、ミニマルで最小限のアイデアを出していったのですが、何か遊びのあるものも必要ということでデザインしました。
この案の特徴としては、せっかく3Dプリンターで出すので、成形では制約がある方式に囚われないようにしました。バンドひと巻きで一箇所で止められる。同素材で完結させる。色も着せ替え感覚で変えられる。このあたりが、この形状とうまくマッチしたなと思っています。



加藤

これは、他のモデルと違って厳密な寸法コントロールは一切していません。単純な箱の上下をバンドで押さえるだけ、という構造なんで。もちろん、最小寸法ギリギリで攻める、みたいなデジタルならではのやり方も良いんだけど、これは本当にラフに「箱2つをバンドで締めるだけ」です。


3Dプリンターで出す形状として、こういうバンドみたいなものって、通常の成形品で作るあまりしないと思うんです。そういう意味では、かなり3Dプリンターらしいし、効率的に生産できるものだなと思っています。これは本当に、ちゃんとした製品として世に出したいな、という気持ちもあります。


鈴木

「ハーネスモデル」のターゲットとしては、接客業の方を想定しています。例えば不動産屋さんの内見の時に持っていく、とか、そういうイメージですね。シュッとした服装の人が持つ感じ。色のイメージとしては、これはフェデックス、これはイケア、みたいな。現状ではソライズパートナーさんの持っている標準カラーなので。このあたりの塗装の色合いは、今後のチューニング余地ですね。


加藤

SOLIZE PARTNERSさんに質問です。


各々のプロダクトに言えるんですが、3Dプリンター製品はプラモデル感がどうしても出るじゃないですか。MJFの塗装って、見栄えとしてそんなに劇的に良くなる技術でもないので。さっき話に出た「下地をどうするか」みたいな話も含めて、今後に向けて可能性ってあったりしますか?


井上

そうですね。これは素地にそのまま塗装しましたね。もちろんプライマーを入れて、研磨も組み合わせれば、ツルツルの光沢を出したりも全然できるんです。なので、工程を1個足すことで、成形品のようなツヤ感のある表現も可能だと思っています。コストとの兼ね合いにはなってきますが、技術的には可能です。


井田

磨くとなると、現状では人の手で磨く部分が多くて、工数がかかるという課題はあります。ただ、二次処理装置も世の中に色々あって、化学的に、例えば蒸気を当てて表面をミクロン単位で溶かしてツルっとさせる技術もある。そういう装置は日本にもありますし、小ロット向けでも使えるところもあります。ハーネスの白いやつみたいなツルっとした表情も、ケミカル系処理で出せますね。

先ほどお話ししたフィニッシュについての技術も何かブレークスルーが必要ですね。


鈴木

金属との組み合わせだけでなく、ここの面は革を貼るとか、そういう組み合わせもありかなと思いました。




鈴木

これは「かわいい系で」というリクエストが社内であったので、丸をモチーフにデザインしたものです。ハーネスにこうやって入れられるようにして、ホテル・カジノとか小売の現場で、マーケティングデータを集めるデバイスにもなるし、遠隔にいる人の顔をここに出して、通話もできるので、タイミーのようなサービスで来た新人スタッフでも、遠隔のエキスパートが二人羽織体制で入って接客できる、みたいな使い方も想定できます。あとは防犯。ここに人の顔が映ってること自体が抑止になるし、盗撮感もあまりないようにデザインしています。


加藤

これは光造形を使っているので、ちょっとコストは高くなるけど、さっき言ったみたいに MJF を使ってもう少し量産性を上げるとか、安価なFDMを使った造形も、最終製品として選択肢に入れていくべきだと思っています。光造形・MJF・FDM…今のところそのあたりの技術をどう上手く使い分けてプロジェクトにアサインするかがポイントですよね。




テーマ9:CEATECでのデザインについて2


鈴木

これはシンプルで秀逸なデザインですよね。


加藤

プロジェクトとしてはテーマカラーが黒だったじゃないですか。黒ベースでいくんだったら、素材感での違いみたいなのを出した方がいいだろうと思い異素材を組み合わせています。

中央のグリップ部の表面の凹凸デザインは光造形で、その他外側のケーシングはMJFで、という使い分けをしています。サーフェスデザインについては弊社運営のデジタルサーフェスデザインサイト surfacestudio.net から引用しています。
デザインや構造としては他のものに比べてシンプルです。至って普通ですが、表面処理や素材の違いで面白みを出そうと試みました。


鈴木

真ん中のここはテカリがあって、ここはマットで。素材の違いがめちゃくちゃ面白く出てるし、やっぱりサーフェスのデザインも3Dプリンター感がすごく少ないんですよね。


加藤

そうですね、光造形の積層痕も問題なく緩和しています。3Dプリンター品の耐久性については、一般的なABSなんかのものに比べちゃうと、どうしても傷がつきやすいとか色々あると思うので、MJFとの組み合わせだとか、ハードに使っても違和感のなさそうなデザインみたいな工夫できることっていうのはいっぱいあるかなと思います。


鈴木

もうなんか一つの正解を見た感じがします。これで(笑)。


加藤

ちょっと大人しめので、他のものに比べるとちょっとシックでストイックなデザインに見えるので、そう感じるのかもですね。





加藤

最後、こちらのプロダクトですが、金属パーツをふんだんに使ったタフモデルですね。


村重

コンセプトはG-SHOCKとかミリタリーグッズっぽく作ってほしいっていうオーダーでしたので、リブ構造で強度を出しつつ、エアガンとかに使うレールパーツとか既存製品と組み合わせて使えるというものです。

この金属性のバー形状のパーツに取り付けて実用に耐えるものを作ってみたいなというので、こういったデザインにしました。


加藤

この金属バーも本当は3Dプリンターで金属プリンターで行こうみたいな話を最初していましたよね。


村重

金属3Dプリンターです!



加藤

え?これ金属プリンターですか?削ってないんですか? どこで造形したの? 中国ですか?
こちらで造形しなかったのはコストですか??



村重

そうです。造形していただけたらよかったと思うんですけど、ちょっと試算いただいたときに高くて。。。


井田

これでちなみにおいくら?


村重

6,000円から8,000円ぐらいです。


全員

ええー。


井田

いやまあでもね、技術的には確かにあり得るんですが。2つで? 2つ?


内田

じゃあ中国では、すでにそれだけN数が走ってるってことなんですかね。いやもうそれがビジネスの仕組みとして成立してるっていうのは計算間違いじゃない? いやだって、ほぼ材料費のみみたいな。そういうレベルですけど。


三浦

機械装置を回してればいい、というビジネスが成立しているのかも。多分あらゆる発注を回して。


加藤

さすがにこれは。それはSOLIZE PARTNERSさんにがんばれってお願いできない価格ですね。
そうか恐るべし。まあ恐るべしって言ってる場合じゃなくて、デジタル製造ってそういうことですよね。


三浦

いい事例だと思っています。需要さえ固まってくればあり得るんですよね。

世界と中国の違いは、それで製品発売まで行けてる企業さんが明確に多い点です。

一時期の深圳にいた企業とかは、3Dプリンター部品をバンバン最終製品として売ってる文化がもうありました。多分最終製品の製造機器としての3Dプリンターっていうのは、いい意味で導入が早かったんだと思います。


加藤

金属プリンター使ったデザイン製品を、メーカーさんの依頼を受けて作ったりしたことも何回かあるんだけど、やっぱり当時の金属プリンター製品の強度が信用されていなく、実物を試験して大丈夫だったけど、ユーザー側の不安が原因で世に出なかったことがあります。

例えば純チタンとチタン造形の製品比べちゃうと、チタンって言ってるくせに、一回溶かして積層しちゃうとチタンの強度の良さみたいなのが100%発揮できなくなっちゃうから、ちょっと信用ならないなみたいな話が多いんで、許可されないんですよね、製品として。でも中国はきっと三浦さんおっしゃったように、きっとこれくらいでいいやって、最終製品に出しちゃってるんですよね。


三浦

恐らくそれが折れたらちゃんとしたのを使えばいいやっていう文化で、製品モデルチェンジのサイクルが日本の3倍くらい早くてやれちゃうんだと思いますね。そこは文化の違いだと思います。日本でこれやった時に、やっぱり中のボイドとかどうなるの?って言ったら、そりゃ厳密に言うとあるだろうけど、、みたいな話になる。


井田

まさに文化の違いだと思って。ヨーロッパとかも結構壊れたらまあまあしゃあないかっていうような感じで、また作ればいいかというようなスタンス。でも日本ってやっぱり、壊れることってあり得ないっていう感じだと思います。

金属プリンターのボイドはあるとはいえ、強度的なところで言うと、やっぱり鋳物以上鍛造未満みたいな感じでよく言われます。密度としたら我々としても、「約100パーセント」っていう感じで謳ってはいます。鋳造みたいないわゆる大きなボイドみたいなのは基本的にはできないはずですので、その辺をどう皆さんに評価していただくかっていうところになってくるのかなと思います。


三浦

これも実用的な話じゃなくて、原理上鋳造のボイドのでき方と違うけど、ミクロのレベルでは存在しうるよねって言われたらそりゃそうなんですけど。それを明らかにすることを求めている人いる?と思っています。

あと、最近思ってたことがあるんですが、例えば骨になる部分抜いちゃって、引き抜き材入れてネジ止めしてしまえば、実は強度って全部担保できるんじゃないのとか、そういう設計上の工夫で超えられる部分ってもっとあると思ってるんですよね。


加藤

鉄筋コンクリートみたいな構造になるということですね。


三浦

そういうものも全然あるのかなと思うので、3Dプリンター素材自体の強度をどうにかしようっていうことが語られがちでしたけど、「世の中にある安定した安価なものを組み込みやすい技術なんですよ」っていう謳い方をすると、もっと使ってもらいやすくなる気はしますね。




テーマ10:まとめ


三浦

ジザイエは「やることが固まらない企業」という前提があって、どんどん新しいことにチャレンジしていきたい会社です。遠隔就労支援を掲げていて、「就労する人の代替サービス」を作りたいと考えています。だからハードウェアは絶対に紐づいてきます。これはジザイエとして決まっていることで、逃れられないことです。そのときにどうしても、大量に作って大量に投入するというニーズではなくて、多品種・少量、しかも多品種の上に「現場ごとのニーズや制約」が乗ってくる。そういう意味で、モノづくりとしてはかなり難易度の高いことを求められています。既存のモノづくりのやり方だけではとても追いついていけません。追いつこうとすると、会社の規模を10倍、20倍にしていかないといけないような世界だと思っていて、それは今の私たちが目指すべきでもないし、現実的でもない。


だからこそ、新しいモノづくりのあり方にチャレンジすれば、できるんじゃないかと思わせてくれたのが、「デジタルで製造しましょう」という考え方だった。すごく大きな光明だったと思っています。イメージとしては、「ソフトウェアのようにハードウェアを作る」です。トライアンドエラーに1〜2ヶ月もかけ続けるのではなく、時間的制約やコスト的制約を飛び越えていけるようにしたい。技術革新が速い中で、「ディープフロッグ現象」じゃないですけど、一度ここに投資しちゃったから、「次の世代のものを入れられないよね」みたいな状態になって、二世代くらい古い技術で無理やり頑張る──みたいなことを、なるべく起こさない形でいたい。この先5年・10年で、いろんなサービスをどんどん作っていける状態にしたい、というのが、ジザイエとして思い描いているところかなと思っています。


加藤

「ソフトウェアのようにハードウェアを作る」──その世界がいいと思っています。まさに今のお話が、SEIZOとしてのメインターゲット像なんですよね。僕らが想定していたお客さんの代表格です。


内田

SEIZOは、「BORDER FREE products」をサービスのビジョンに掲げています。


自社製品を作りたいけど、大量生産でもなくて、小ロットをいくつも作りたい。でも、金型はコストが高い、時間がかかりすぎる、そもそも3Dプリンターのことがわからない、などの製造に関するBORDER(障害・障壁)を取り払うことが我々の役割だと思っています。その実現のためにも、ものをつくりたいと思うあらゆ人にむけて「新しい選択肢」として、ふつうにデジタル製造を取り入れてもらえるよう、はやく「あたりまえ」の技術として取り入れやすいものとして、ご提供していきます。


株式会社ジザイエ様のような、旧来製造法のみでは事業自体のスピードを成立・維持できないような、新しいビジネスモデルの企業さまが出現してきており、これからの近未来どんどんそのような企業が増えていくと予想されます。あるいは、旧来の大量生産体制では継続していくことのできない市場規模感の変容がある分野などもあるかもしれません。


このような概況に向かって、よりフレキシブルな選択肢を製造領域に配備していくことはSEIOの使命だと考えております。今回の対談でもジザイエ様のご意見のあった、3Dプリンタ品の物性の情報や仕上げ加工法等については、随時検証を進めていきながら情報開示をしていけたらと考えております。



プロジェクトの総括として話し合ったミーティングが、あまりに面白かったため、なるべくカットせずに前後編にわたり長文を掲載してしまいました。

お読みいただきありがとうございました。


また、これからの日本製造業を変えるゲームチェンジャーが何になるのか、幅広い範囲で仕事をしている弊社ならではの見解でお伝えしていければと考えています。次回もご期待ください。

 
 

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